【FP監修】養育費が払われないときの対処法|具体的な受け取り方と強制執行まで徹底解説

養育費

養育費は子どもの健全な成長のために不可欠な経済的支援です。しかし、厚生労働省の統計によると、養育費の取り決め率は約65%に留まり、実際の受給率は約24%となっています。この深刻な状況の背景には、適切な取り決めがなされていないケースや、強制力のある取り決めがなされていないことが要因として挙げられます。本記事では、養育費を確実に受け取るための方法と、滞納が発生した場合の具体的な対策について、ファイナンシャルプランナーの視点から解説します。

目次

1. 養育費の取り決めと金額設定

養育費の取り決めは、離婚時に最も重要な経済的な取り決めの一つです。適切な金額設定と確実な受け取り方法を決めることで、将来のトラブルを防ぐことができます。

主なポイントは以下の通りです:

  • 養育費の算定表を参考に、子どもの年齢と収入に応じた標準的な金額を確認
  • 教育費や医療費など、将来の特別な出費への対応方法も明確に
  • 支払い方法と期日を具体的に明記

養育費の算定表は、裁判所のウェブサイトで公開されており、両親の収入と子どもの年齢に基づいて標準的な金額が設定されています。例えば、父親の年収500万円、母親の年収300万円、子ども1人(小学生)の場合、月額4〜5万円程度が目安となります。

ただし、この金額はあくまでも目安であり、以下の要素も考慮して総合的に判断する必要があります:

  1. 子どもの現在の生活水準と将来の教育計画
  2. 両親の収入や資産状況
  3. 子どもの特別な需要(習い事、医療費など)
  4. 物価上昇や収入の変動可能性

特に教育費については、公立・私立の選択や、学習塾・習い事などの費用も含めて検討が必要です。高校や大学進学時の学費についても、予め取り決めておくことで、将来の紛争を防ぐことができます。

2. 確実な受け取り方法の確立

養育費を確実に受け取るためには、支払い方法の取り決めが重要です。

2-1. 推奨される支払い方法

信頼性の高い支払い方法として、以下が推奨されます:

  • 口座振込による自動引き落とし設定
  • 給与天引きの活用
  • 家庭裁判所の調停調書または審判書の作成

口座振込による自動引き落としは、最も一般的で確実な方法です。支払い義務者の口座から自動的に引き落とされるため、支払い忘れを防ぐことができます。また、振込記録が残るため、後々のトラブル防止にも効果的です。

給与天引きについては、支払い義務者の勤務先の協力が必要となりますが、確実性が高い方法の一つです。ただし、転職時には再度手続きが必要となる点に注意が必要です。

家庭裁判所での調停や審判による取り決めは、法的な強制力を持つため、万が一の滞納時に強制執行の手続きがスムーズに行えます。可能な限り、公的機関を通じた取り決めを行うことをお勧めします。

2-2. 書面による合意の重要性

養育費に関する合意は、必ず書面で残すようにしましょう。

重要な記載事項:

  • 養育費の金額
  • 支払期日と方法
  • 将来の増額・減額に関する条件
  • 不履行時の対応

書面による合意は、単なる覚書ではなく、法的効力のある文書として作成することが重要です。具体的には、以下の方法があります:

  1. 公正証書の作成
  • 公証役場で作成する公正証書は、強制執行認諾文言を付けることで、滞納時の法的手続きがスムーズになります
  • 作成費用は金額によって異なりますが、通常2〜3万円程度です
  1. 調停調書の作成
  • 家庭裁判所での調停で作成される調停調書も、法的な強制力を持ちます
  • 申立費用は数千円程度で済みます

3. 滞納が発生した場合の対策

養育費の滞納が発生した場合、段階的な対応が必要です。

3-1. 初期対応のステップ

滞納発生時の基本的な対応手順:

  • 支払い義務者への連絡と支払い要請
  • 支払い遅延の理由確認
  • 分割払いなどの代替案の検討

まず、支払い義務者に対して、電話やメールで連絡を取り、支払い遅延の理由を確認します。この際、感情的にならず、冷静に状況を把握することが重要です。失職や病気など、やむを得ない事情がある場合は、一時的な減額や分割払いなどの代替案を検討することも考えられます。

ただし、これらの対応は一時的なものとし、必ず書面で合意を取り付けましょう。また、すべてのやり取りは記録として残し、日時や内容を詳細に記録しておくことが重要です。

3-2. 法的手続きによる解決

話し合いによる解決が困難な場合は、法的手続きを検討します:

  • 支払い督促の申立て
  • 強制執行の手続き
  • 履行勧告の申立て

支払い督促は、比較的簡単な手続きで開始できます。申立費用も約1,000円程度と低額です。ただし、相手が異議を申し立てた場合は、通常の訴訟に移行する必要があります。

強制執行は、預貯金の差し押さえや給料の差し押さえなどが可能です。ただし、相手の財産状況を把握している必要があり、手続きも複雑なため、弁護士に相談することをお勧めします。

履行勧告は、家庭裁判所から支払い義務者に対して支払いを促す制度です。強制力はありませんが、裁判所からの勧告という形で支払いを促すことができます。

4. 養育費確保の公的支援制度

近年、養育費の確保を支援する様々な公的制度が整備されています。

主な支援制度:

  • 養育費等相談支援センターの無料相談
  • 母子父子寡婦福祉資金貸付金
  • 養育費保証制度

養育費等相談支援センターでは、養育費に関する法律相談や手続きの相談を無料で受けることができます。専門の相談員が対応し、具体的な解決方法を提案してくれます。

母子父子寡婦福祉資金貸付金は、養育費が支払われない場合の緊急的な支援制度として利用できます。ただし、貸付金であるため、返済が必要となります。

養育費保証制度は、民間の保証会社が養育費の支払いを保証するものです。月額の保証料は養育費の10〜15%程度が一般的です。滞納時には保証会社が立て替え払いを行い、その後、保証会社が支払い義務者に請求を行います。

まとめ

養育費の確実な受け取りには、以下の3点が重要です:

  1. 適切な金額設定と明確な取り決め
  2. 確実な支払い方法の確立
  3. 滞納時の対応策の準備

養育費は子どもの権利であり、その確保は親としての重要な責務です。問題が発生した場合は、早期に専門家に相談し、適切な対応を取ることが推奨されます。また、定期的に支払い状況を確認し、記録を残すことで、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。

特に重要なのは、離婚時点での適切な取り決めです。感情的になりやすい時期ではありますが、子どもの将来のために、冷静に話し合い、確実な取り決めを行うことが、その後の安定した養育費の受け取りにつながります。

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