財産分与の基本:対象となる財産と計算方法

財産分与の基本:対象となる財産と計算方法

離婚に際して避けては通れない財産分与の問題。「何を」「どのように」分けるのか、具体的な事例を交えながら解説していきます。この記事を読むことで、財産分与の基本的な考え方から実践的な計算方法まで、体系的に理解することができます。

目次

1. 財産分与とは何か

財産分与の法的根拠

民法第768条に基づき、夫婦の一方は離婚に際して、相手方に対して財産分与を請求することができます。これは婚姻期間中に協力して形成した財産を、公平に分配するための制度です。

財産分与の目的

  • 婚姻中に形成した財産の清算
  • 離婚後の生活保障
  • 慰謝料的な要素(場合により)

請求できる期限

離婚が成立してから2年以内に請求する必要があります。この期限を過ぎると請求権が消滅してしまうので、注意が必要です。

2. 財産分与の対象となる財産

2-1. 対象となる財産

不動産

  • 婚姻中に購入した自宅
  • 投資用不動産
  • 土地
  • 別荘

金融資産

  • 預貯金
  • 現金
  • 株式
  • 投資信託
  • 暗号資産
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)

その他の資産

  • 生命保険の解約返戻金
  • 退職金(将来受け取る予定のものを含む)
  • 自動車
  • 貴金属・骨董品
  • ゴルフ会員権

2-2. 対象とならない財産

  • 相続で得た個人財産
  • 婚姻前から所有していた財産
  • 婚姻中に受けた贈与財産
  • 慰謝料
  • 個人的な衣類や身の回り品

3. 財産分与の計算方法と具体的事例

基本的な計算の考え方

  1. 対象財産の特定
  2. 財産の評価
  3. 寄与度の検討
  4. 分割割合の決定
  5. 具体的な分割方法の検討

財産の評価方法

  • 不動産:路線価や実勢価格を参考に算出
  • 預貯金:残高証明書の金額
  • 有価証券:時価
  • 動産:購入時の価格から減価償却を考慮

具体的事例で学ぶ財産分与

ケース1:共働き夫婦の財産分与

【基本情報】
・婚姻期間:15年
・夫の年収:800万円
・妻の年収:400万円
・子供:なし

【形成された財産】
・自宅マンション:3,500万円(ローン残債1,500万円)
・預貯金:夫名義 1,200万円、妻名義 400万円
・退職金積立:夫 800万円、妻 300万円
・車:200万円

【分与の計算】
1. 総財産の算出:4,900万円
2. 寄与度考慮:収入比率2:1、共働きで家事分担
3. 最終的な分与(6:4)
   夫:2,940万円
   妻:1,960万円

ケース2:専業主婦との財産分与

【基本情報】
・婚姻期間:20年
・夫の年収:1,000万円
・妻:専業主婦(育児に専念)
・子供:2人(未成年)

【形成された財産】
・自宅:4,000万円(完済)
・預貯金:2,000万円
・投資信託:1,000万円
・生命保険解約返戻金:300万円
・車:400万円

【分与の計算】
1. 総財産の算出:7,700万円
2. 寄与度考慮:妻の家事・育児を高く評価
3. 最終的な分与(4:6)
   夫:3,080万円
   妻:4,620万円

ケース3:事業主と専業主婦の財産分与

【基本情報】
・婚姻期間:25年
・夫:個人事業主(年収1,500-2,000万円)
・妻:専業主婦(事業の手伝いあり)
・子供:2人(成人)

【形成された財産】
総額:16,000万円(事業用財産含む)

【分与の計算】
1. 事業継続性を考慮した財産評価
2. 妻の家事・育児・事業補助の寄与を評価
3. 最終的な分与(55:45)
   夫:8,800万円
   妻:7,200万円

各ケースから学ぶポイント

  1. 収入比率だけでなく、家事・育児の寄与も重要
  2. 事業用財産は継続性を考慮した評価が必要
  3. 分割方法は現物分割と現金調整を組み合わせる

4. 財産分与に影響を与える要因

婚姻期間

  • 長期の婚姻期間→均等な分割に近づく
  • 短期の婚姻期間→寄与度をより重視

各配偶者の収入と寄与

  • 収入格差の存在
  • 専業主婦(夫)期間の評価
  • 育児・介護への貢献

婚姻破綻の原因

不貞行為など、離婚の原因を作った配偶者の取り分が減額されることがあります。

5. 財産分与の手続きと注意点

手続きの流れ

  1. 財産の洗い出し
  2. 評価額の確定
  3. 当事者間での協議
  4. 合意書面の作成
  5. 必要に応じて調停・裁判

注意すべきポイント

  • 財産の隠匿への対処
  • 税金の取り扱い
  • 将来の退職金の取り扱い
  • 不動産の名義変更手続き

6. 専門家に相談すべき場合

  • 財産が複雑な場合
  • 高額な財産がある場合
  • 事業用財産がある場合
  • 国際離婚の場合

7. まとめ

財産分与の準備チェックリスト

□ 財産目録の作成
□ 各財産の評価額の算出
□ 必要書類の収集
□ 専門家への相談検討
□ 分与案の作成

関連する相談窓口

  • 法テラス
  • 各地の弁護士会
  • 家庭裁判所の手続案内
  • 税理士会

財産分与は、将来の生活設計に大きく影響する重要な問題です。感情的になりがちですが、できるだけ冷静に対応し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら進めることをお勧めします。

本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。具体的なケースについては、必ず専門家にご相談ください。

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